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Project Story 2 | 世界初。10nmの微粒子計測に成功。超純水のさらなる高度化に挑んだ技術者たちの物語。〜半導体の技術革新に必要不可欠な超純水を生み出すために〜

近年のスマートフォンや自動車の技術進化を加速させているのは、様々な精密機械、電子機器に搭載されている半導体技術の進歩によるものと言っても過言ではない。半導体は電子回路線の幅(=線幅)を細くすることで、性能向上や生産コスト低減を実現してきた。高密度で回路を描けば、扱える情報データ量も増え、結果的に半導体そのものの小型化が進む。
過去から小型化を業界全体の未来計画(ロードマップ)として掲げており、半導体メーカーは各分野のサプライヤーにそれに見合う技術を求め続けてきた。
半導体の洗浄に用いられる超純水も例外ではない。半導体の線幅が10nmとなり、更なる進化を遂げようとしているなか、超純水中に存在する10nm微粒子の計測技術は確立されていなかった。線幅を超える微粒子が超純水中に存在していては、半導体製造上のリスク管理に不安を残すこととなる。長年に亘り、半導体業界で超純水製造装置のサプライヤーとして確固たる地位を築いてきたオルガノが、業界の常識を超える10nmの微粒子計測技術の確立に挑む。

まだ世界にない技術を生み出す。

新技術開発を担ったのは、開発センター システムグループ 超純水チームに所属する菅原、市原、村山と新領域グループの蔦野の4名だ。超純水チームは、水処理を中心とした流体精製システムの開発を手掛けており、すでに半導体メーカー向けのシステム・技術開発で多くの実績を挙げていた。
当時、超純水中に存在する10nmの微粒子を計測する技術は、世界中のどこにも存在していない。プロジェクトメンバーの4名は「自分達が世界初の技術を生み出す。」という強い信念を持ってプロジェクトに取組んだ。

菅原のチームは以下の2つの分析手法を並行して研究開発を進めることとした。
ひとつが「直検法(直接検鏡法)」、もうひとつが「オンライン分析」による方法である。「直検法」は、一定量の水をろ過膜でろ過し、ろ過膜に残った対象物を計測するという方法だ。「オンライン分析」では、サンプルをリアルタイムに測定する。サンプルへの光・電磁波の放出あるいは吸収を測定する分光法などが代表的だ。連続したオンライン測定が可能であるということ、操作が簡便であることなどが特徴である。

研究者一人ひとりが仮設を立て、自由に考えることができる風土こそ、オルガノの強み。

研究を開始してから1年が経ったころ、「直検法」で10nmの微粒子計測への手がかりを掴むことに成功する。
「直検法」による計測技術の確立は、大きく3つのステップに分けられる。1つ目は超純水中の微粒子を捕捉する“ろ過膜”の開発。2つ目は“ろ過技術”及び“SEMでの連続自動観察技術”の開発。3つ目は、開発した技術の実証試験だ。

新技術確立において最も重要な素材である“ろ過膜”の開発に携わったのは、当時新卒で入社して間もない村山だ。まず初めに様々な膜メーカーから取り寄せた既存の膜を用いた検証を行ったが思うような結果が得られず、2年目に自社で新規膜を開発する方法に切り替えた。新規膜の開発においては、同技術で先行する大学の研究室から技術協力も得て、村山自身で改良を重ねていった。膜開発までの検討条件は最終的に460通りを超えたという。村山は当時をこう振り返る。「もともと研究のトライアンドエラーを重ねる工程が好きで、上手く結果が出せない時も、次のアプローチを考えられるため楽しくできました。自由な発想で研究開発ができるのも上手くいった要因だと思います。」
この世の中に存在しない10nmの微粒子を捕捉する膜を、自分で考えて開発する工程は、村山にとって研究者冥利につきる仕事だった。トライアンドエラーを繰り返し、ついに村山は10nm直検法用ろ過膜の開発に成功する。

並行して新規膜の性能を最大限に活かす“ろ過技術”の開発を担当したのが市原だ。10nmの微粒子を捕捉できる膜があっても、ろ過の工程で他物質の混入(コンタミネーション)が起きてしまっては実験の結果に信頼性が無くなってしまう。遠心ろ過技術を用いた10nm直検法用ろ過装置を開発し、計測時間を短縮した上で、コンタミネーションを防ぐろ過技術を確立。ろ過膜に微粒子を捕捉することが可能となった。

蔦野はろ過膜に捕捉された微粒子の観察技術を担当した。10nm微粒子の観察・計数を行うには、SEMと呼ばれる高性能の電子顕微鏡を用いても、かなりの高倍率が要求され、統計的に信頼性のある計数値を得るためには数千視野の観察が必要となる。SEM観察条件の最適化、画像解析技術の応用により、10nm微粒子を数千視野連続で自動観察する技術を確立し、実証試験の成功に繋げた。

「エンジニアリング会社であるオルガノは自社製品に縛られることなく、様々な技術や手法を自由に取りいれていくことができます。自分達で仮設を立て、研究開発を進めていける自由さは研究者として、とてもありがたい環境ですね。」とプロジェクトメンバーの4名は振り返る。
こうして菅原のチームは、研究開発の開始から3年で「直検法による10nm微粒子分析技術」を確立することに成功した。

世界最先端技術を確立。国内外から多数の分析依頼が舞い込む。

この「直検法による10nm微粒子計測技術」の研究成果は、日本とアメリカをはじめ国内外の関連学会で発表され、高い評価を受けた。オルガノは、世界最先端の技術を生み出した企業として一躍世界中に認知される。半導体業界を代表する世界的な企業や技術者、研究団体から高い評価を受けたことは、プロジェクトメンバー4名の誇りであり、オルガノの研究・開発力を世界に証明することとなった。
世界初の技術の実用化に成功し、国内外の半導体メーカーから注目を集めるオルガノ。いま菅原たちのもとには、国内外の半導体メーカーから多数の分析依頼が舞い込んでいる。このプロジェクトを牽引した菅原は「海外の主要半導体メーカーでの実績もあり、高い評価を得ています。微粒子の分野はまだまだ分からないことも多く、世界的に関心が高い分野ですので、今後も国内外での展開をさらに強化していきたいです。」とさらなる発展を誓う。

超純水の更なる高度化に向けて挑戦は続く。

この最先端技術の実用化成功により、超純水システム内における10nm微粒子挙動が明確になり、超純水システムの最適化と高品質化がさらに進み、微粒子を除去し管理された超純水の提供が可能となる。「私たちが開発した“直検法による10nm微粒子計測技術”は、まだ100点満点とは言えません。水処理プラントメーカーとして高品質の水を提供するために、私たちの挑戦に終わりはありません。」と菅原は兜の緒を締める。
遠心ろ過装置の開発や実証試験を担った市原も「これからも半導体技術は進化し続けます。半導体メーカーのロードマップでは、すでに5ナノメートルでの分析が要求されています。」とオルガノの挑戦に終わりがないことを強調した。事実、5ナノメートルの微粒子を計測するためには、今回の直検法では時間が掛かり過ぎて実用的ではないという。さらに一歩も二歩も踏み込んだ技術開発が要求されているのだ。最後に菅原は「半導体の高度化と低コスト化は、IoTやAIといった次世代の技術革新にもつながります。オルガノの超純水技術は半導体メーカーだけでなく、人々の暮らしや健康、社会全体の発展に貢献できると確信しています。」と未来への可能性と期待を語った。