「絶対に成功させましょう」、その思いを共有して。
スーパーカミオカンデは、鉱⼭の地下1,000mの場所に位置し、地下から宇宙を観測するという壮⼤なアプローチだ。岩盤は宇宙から降り注ぐ不要な粒⼦(宇宙線)を遮り、全⾼41.4m、直径39.3m、5万トンの超純⽔で満たしたステンレス製タンクはニュートリノを捉える。
5万トンの⽔に超純⽔が求められる理由は、⽔中にわずかでも不純物があると、ニュートリノから発⽣した微弱なチェレンコフ光が遮られてしまうからだ。オルガノに課せられたミッションは、極限まで磨き上げられた超純⽔の開発に加え、地下深部の設備設計、配管ルートの最適化、緻密なシステム管理など、⽔に関するトータルソリューションだ。この責任重⼤な任務に抜擢されたのが、新⼊社員の望⽉だった。
「前プロジェクトの“カミオカンデ”においてオルガノは超純⽔を供給した実績があり、観測の精度をさらに⾼めるために、“スーパーカミオカンデ”がスタートしました。それが私の⼊社と同時期で、いきなり営業の⼤役を任されたわけです。東京⼤学の研究室を訪ねると、書類や資料がうず⾼く積まれたその奥に、若き⽇の梶⽥先⽣がいらっしゃって、書類の⼭に埋もれながらディスカッションを重ねたのを鮮明に覚えています」と望⽉が当時を振り返る。
梶⽥先⽣とは、後にスーパーカミオカンデによってニュートリノ振動を発⾒し、ノーベル物理学賞を受賞された東京⼤学の梶⽥隆章教授のことである。望⽉が続ける。
「梶⽥先⽣はとても温厚でお優しい⽅なのですが、宇宙の話をする時だけは⽌まらないのです。難しい話をわかりやすく繰り返ししてくださり、宇宙の謎を解明する⼒に⾃分もなりたいと意を強くしました。お互いに『やりましょう、絶対に成功させましょう』と呼吸を合わせ、それがプロジェクトの加速につながったと思います」。

⽔のスクリーンに求められた、唯⼀無⼆の超純⽔とは。
5万トンもの⽔からあらゆる不純物を取り除き、完璧なスクリーンを作り出す。⼀般的な超純⽔装置が数トンから数百トン規模であることを考えると、⽔のスクリーンで追求するチャレンジが、いかに桁違いなものであるかがわかるであろう。
多くの分野へ超純⽔の供給実績を持つオルガノにとっても⼤きな挑戦となる、規模も質も桁違いの超純⽔とはどのようなものなのだろうか。望⽉が説明する。
「スーパーカミオカンデが要求する⽔質は、当時としては唯⼀無⼆の要求値でした。中でも、最⼤の難関が放射性物質の除去でした。鉱⼭の中は、空気中にもトリウムをはじめ、さまざまな放射性物質が存在します。とりわけラドンは最⼤の敵で、岩盤の割れ⽬からトンネル内や⽔槽内へじわじわと染み出し、⽔中で崩壊して放射線を出すと、スクリーンに不要な光のノイズを⽣み出し、ニュートリノの微光を覆い隠してしまうのです。⼀⽅で、超純⽔を作るシステムの中で、脱気といって⽔の中に溶け込んでいる不要な成分を空気で取り除く⼯程がありますが、鉱⼭内の空気を取り込んでしまうと空気中の不純物が再び溶け込んでしまうという⽭盾を抱えることになります。ですから、⽔だけでなく空気までケアしないと要求に応えることができません。そこは我々の通常のビジネスで使う技術を超えた、まさにスーパーテクノロジーが求められたところです」
最⼤の難関である放射性物質をはじめ、イオン成分、有機物、微粒⼦など、あらゆる不純物を許容限界以下に抑え込むことで、「スーパーカミオカンデ仕様の超純⽔スクリーン」は実現する。本当にできるのだろうか?前例なき取り組みに時として⼼が挫けそうになる度に、望⽉は「やりましょう、絶対に成功させましょう」という梶⽥先⽣の⾔葉を胸に刻んで前へ進んだ。




































