超純水のクリーン化技術を応用した、技術的背景とは。
2000年代初頭、オルガノは超純水で磨いた技術の転換点を迎えていた。開発部門では、超純水以外の溶剤系におけるニーズと、不純物を除去するイオン交換樹脂のシナジーを探求する日々が続いていた。開発の主要メンバーとして参画していた伊藤が当時を振り返る。
「私たち開発部門では、有機溶媒を精製する技術に挑戦していました。これは事業部門と一丸となった取り組みで、半導体メーカーや電子材料メーカーが直面していた“クリーン化の壁”という課題に応えられる可能性を秘めていました。超純水で培ったクリーン化技術を応用展開できれば、多くのお客さまの困りごとを解決できる!シナジーの糸口が見つかったことで全社的プロジェクトとなり、技術、営業、経営層が一体となって一気に加速しました」と伊藤。電子材料精製用イオン交換樹脂プロジェクトの本格的なスタートだった。
しかし当時、溶剤系の電子材料に関する知見はまだなかった。そこで、伊藤たち技術者は事業部門の営業メンバーと一緒に顧客訪問を繰り返した。「多くのお客さまのお話を聞くにつれて理解が深まり、課題が見えてきました。除去したい物質は何か?下げたいレベルはどこか?イオン交換樹脂に求めるものは何か?日を追って仮説の確度が高まり、技術が製品になっていきました」と伊藤は言う。

あと一歩の純度が求められる、市場的背景とは。
半導体の製造工程では多種多様な電子材料が使われているが、半導体メーカーや電子材料メーカーの頭を悩ませているのが微量の不純物だった。営業として当時の状況を知る石原が説明する。
「半導体製造に必要な超純水がほぼ理論値の純度を達成していた一方で、電子材料の純度は低くウェハーの汚染原因となっていました。水も電子材料もきれいでなければ、半導体を作ることはできません。半導体メーカーさまから承った困りごとを電子材料メーカーさまに伝え、相談を重ねながら解決方法を練り上げていきました」
電子材料メーカーとしても、純度が足りないがゆえの歩留まりの悪さが深刻なボトルネックとなっていた。石原が続ける。
「製造した電子材料を半導体メーカーさまにお届けする際に、不純物の残留が原因で製品として成り立たないことに苦慮しているお客さまが多くいらっしゃいました。たとえば、沸点の違いを利用して不純物を除去する蒸留設備では、設備由来の金属不純物の残留や、沸点の近い不純物の除去に不安があります。あと一歩きれいに、ラスト1マイルを確かなものに。メーカーさまとサプライヤーさまのギャップを埋めることが、私たちのイオン交換樹脂の急務だと痛感しました」
2000年当時、世界の半導体トップメーカーには日本の総合電機メーカーの半導体製造部門が名を連ね、さらなる高度化へと突き進んでいた。電子材料精製用イオン交換樹脂は、まさに時代が要請した期待の先進技術だった。
さらなる需要の押し上げと技術の追究。
電子材料精製用イオン交換樹脂の需要はこの10年で1が10の規模になった。そして、さらにこれからの10年で10が100の事業規模に成長すると見込まれている。その要因は高純度化の対象と要求値の増加にあると、技術営業の仁平が解き明かす。
「3nm*、2nm世代へとロジック半導体の微細化が進み、不純物の除去レベルと除去対象が拡大しています。その結果、従来の技術では対応が難しい領域に課題がシフトし、新規のイオン交換樹脂の採用が活発化しています。一方で、AIやデータセンター等用途の拡大、スマートフォン・自動車の多機能化などによって、半導体製品そのものの需要も増加しています。それに伴い、既存のイオン交換樹脂の需要も拡大しているのです」
その言葉を受け、石原は「半導体はますます高速化し、電子材料をクリーン化するレベルも範囲も広がっていきます。先端技術だったものが5年後には一般的な技術になり、さらに新たな技術が出てきます。半導体産業を支える上で、我々は常に最先端技術をキャッチアップしていく必要があるのです」と強調する。
*nm(ナノメートル)。1nmは10億分の1メートル。半導体の超高性能化が進むほど数字が小さくなる。







































